11 — HONESTY
営業ではなく、本音で向き合う
耳ざわりのいい営業より、後悔しないための本音を。

社員とお客様の間で、伝えた内容と受け取られた内容に食い違いが起きたことがある。そのとき私は、代表として一人でお客様の家に向かった。
言い訳はしない。まず、お客様の話を聞いた。その上で、こうお伝えした。「ご納得いただけないのであれば、当社は何も求めません。解約の手続きをさせていただきます」。会社の都合や売上を優先して、納得していないお客様を無理に引き止めるべきではない。本気でそう思って言った。
すると、お客様からこう言っていただいた。「そこまで誠意を見せてくれるのであれば、あなたは信頼できる人だと思う。このままお願いしたい」。解約を避けるために説得したのではない。解約になっても構わない覚悟で向き合った結果が、信頼につながった。こういうことが、これまで何度もあった。
10年以上経営を続けるなかで、良い意味でお金に無頓着になった。焦りが減ったことで、お客様を苦しめてまでお金を得ようとは思わなくなった。そう思えるようになったのは、10年以上この仕事を続けさせてもらったからだと思う。売上のために無理に契約を取るより、その人が後悔しない判断ができるように伝えることを大事にしている。
忘れられない相談がある。あるお客様が「不動産は儲かる」と考えて、所有している物件をリフォームして高く売る——買取再販のようなことを、ご自身でやりたいと相談に来られた。私は「この物件では、やめた方がいい」と止めた。リフォームして高く売り出しても、その価格で売れるとは限らない。工事費、販売期間、値下げ、諸費用、借入の返済まで考えると、手を加えずに売った方が手元にお金が残ることも多いからだ。
仕事を取るための言葉ではなく、後悔しないための言葉を伝えたい。
それでも、お客様の決意は固かった。当社で約300万円のリフォームを行い、その後、他のリフォーム会社にも追加の工事を依頼された。費用は相当な金額まで膨らんだはずだ。販売は、別の大手不動産会社に任された。しばらくして、私の電話が鳴った。資金繰りと販売の方針で、厳しい状況になっているという相談だった。借入で工事を進めていたから、返済のためには早く売る必要がある。結果として、お客様にとって厳しい条件の提案を受けることになっていた。最初に止めた理由が、現実になってしまった。
当時、そのお客様には「批判ばかりしてくる」と思われていたと思う。でも私は、家族に伝えるのと同じ感覚で言っていた。「高く売れます」「リフォームすれば価値が上がります」と言うのは簡単だ。仕事が欲しければ、いくらでも都合のいいことは言える。でも、売り出してから売れず、後から値下げを重ねて、最初に伝えていた金額より下がっていく——そんな後悔をしてほしくない。だから最初から、厳しい現実も伝える。お客様を否定したいからではない。後悔しない不動産売却をしてほしいからだ。
私自身、素人からこの業界を始めた。だから、「不動産は簡単に儲かる」「リフォームすれば高く売れる」と思ってしまう気持ちも、よくわかる。ただ、現実の売買には、価格、工事費、諸費用、期間、借入、買主の心理、相場、管理状態——多くの要素が絡む。昔の私は工事ができなかったから、他の不動産会社と同じように、口で説明することしかできなかった。いまは自分たちで工事ができる。原価も、工程も、現場の大変さも知っている。だからこそ、売主様にも買主様にも、より現実的で誠実な提案ができる。
営業なら、耳ざわりのいいことはいくらでも言える。でも、それでお客様が後悔するなら、私はその仕事をしたくない。最後に「あの時、ちゃんと言ってくれてよかった」と思ってもらえる仕事をしたい。売る人にとっても、買う人にとっても、後悔のない取引を。それが、ホームマートのやり方だ。